友達の境界線

昨日の昼過ぎ、テスト勉強に飽きてふと寂しくなった。
話したい
誰かと話したい
できれば女子と
気づいたら弓道部の道場に向かっていた。
が、今日は平日、誰もいるはずがなかった。
誰もいない道場の外で、何ともいえない寂しさを噛み締めながらタバコを吸った。りょう@さんに買ってもらったダンヒル。7mgにしてはノドにくるタバコだ。
あっという間に吸い終わってしまった。
何も面白いことなんかない。
気持ちは落ち着かない。
期待外れだ。


二本目を吸おうか考えていたとき、一年生の女子が来た。
やった!ラッキー!
ラッキー?
一年生に興味はない。話していて楽しくないから。
僕はテスト勉強をしているふりをしながら適当に話を振った。
話が続かない。ダメだつまらん。お前ら楽しくない。


「そろそろ帰るかな」
帰る支度を始めたその時だった。
「こんにちはー」
求めていた声が聞こえてきた。タメだ。
正直に言ってこの子に会いたかった。
「久しぶりだねぇ」
何気ない会話が楽しすぎる。
後輩の目をはばからずハシャぐ俺。
明らかに俺はこの子が好きだ。


「会いたい」と思ったら会えた。
これはもしかして・・・
今度一緒に飯食わない?
「いいよ、明日ならヒマだよ」
キターーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
やべえ、楽しい、楽しすぎる。男子校出身の童貞野郎にとってこれは快挙だ!!


あまりのはしゃぎぶりに自分でもヒいたが、嬉しいものは仕方ない。
もしかしたら友達から前進する足がかりに出来るかもしれない。
気になるあの子とお食事いえーーーい!俺キモーーーースw


今日。
生化学のテストを終えて道場に向かった。
昨日と同じく後輩が数人いて、その中にその子もいた。
「どうする?他の後輩も誘おうか」
そうか、まあそうだよな。デートだと思ってるのは俺だけで、そううまくはいかないわな。
いいよ?誰か誘おうよ。
しかし、皆予定があると言って断られた。結局二人きりに。
思い通りになりすぎて怖いくらいだ。


飯を食べ終わって、二人で世間話をした。
好きな人との会話はそりゃ楽しいものだった。まあ大体は彼女のグチを聞いていたのだが、部内の恋愛の話になった。そして、彼女のある突然の告白に俺は凍りついた。
「私ね、この間S先輩にコクられたんだ。突然肩に手をまわしてきたからビックリしちゃて、結局フっちゃたんだけど。」
は?S先輩?が? ダンディーで「恋愛はもういいよ」みたいな言葉の似合うあの渋いS先輩が?
彼女は人気者だ。彼女が好きな男子はたくさんいる。
問題はその中にS先輩がいたことだ。俺は「彼女が」S先輩に好意を持っているものとばかり思っていた。
逆だったのか?だいたいいきなりボディータッチって、早まりすぎだろS先輩!?


俺の中のS先輩のイメージは崩壊した。
同時に恐怖感が襲った。
タイミングが違えばS先輩は俺だったかもしれない。
フられる・・フられる!バカじゃねえの?なんで俺はあわよくばこいつの彼氏になれると思ってしまったんだ?
バカすぎる。アホすぎる。
マジかよー?!S先輩がぁ?めっちゃ以外なんだけどwww
俺は自分自身を笑った。


結論。
俺はこの子と友達でいたい。
だから変な気は起こさないことにした。


こうしてまた女友達が増えた。
また誘ってもいいかな?
「いいよ、多分またグチっちゃうと思うけどw」


彼女はなぜ俺にS先輩の話をしたんだろう。
部内の男子ほとんどからコクられた彼女。
俺にはグチれる友達でいて欲しかったんだろうか。